ズミクロン35mm8枚玉と球面ズミルクス35mmの撮り比べ

初代のズミクロン35ミリ、いわゆるズミクロン8枚玉と、初代ズミルクス35ミリ、いわゆる球面ズミルクスと呼ばれているレンズを比べてみた。あくまでも手持ちのレンズ同士での比較である。

以下写真多し。 

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 ズミクロン35mm8枚玉の販売開始は1958年で次の第2世代に製造が切り替わる約10年間生産されたモデル。我がレンズのシリアルナンバー231****からすると最終年となる69年製ということになる。

 球面ズミルクスの販売開始は1960年でその後なんと35年間も生産されたロングランモデルとのこと。我が球面ズミのシリアルナンバー325****からすると84年製ということになる。

  ちなみにいずれの我が2本とも程度としては良いというわけでもとりたてて悪いというわけでもない、概ね中程度だと思っている。大きな傷や曇りは無いが細かいチリは入っているという状態である。

 

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 写真は色やコントラストは一切いじらずサイズだけ半分程度にしてアップした。カメラはM9。設定は普段通りJPEGモードであるが珍しくカラーにしてみた。感度はM9のベースであるISO160。これまた珍しく三脚を使用したがつまりは自分の好みは押し殺し、なるべく比較し易いようにという設定にしたつもり。天候は晴れだが雲が行き交っていたので明るさは結構移り変わっている。それと撮り方であるが、まず8枚玉をひととおり撮ってから球面ズミに交換して同じ条件設定で撮る、というやり方をしている。よって上下2枚並んでいても時間が10分程度は違っているため空の具合が結構移り変わっておりそれで明るさも違っていることは踏まえておく必要がある。

 

 以降のポスト写真は1枚目が8枚玉、2枚目が球面ズミということで。

まずは無限遠で。いずれも最小絞り値であるF16から。シャッタースピードは1/30。

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 双方、ステンレスの洗濯物干竿の反射など強い光源は滲んでいる。球面ズミのほうが顕著に出ているとはいえ、それ以外ではF8くらいまで双方の違いは判らない。

 

 

無限遠 F11 SS1/60

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無限遠 F8 SS1/125

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局所的に滲み方の違いはあるとはいえこのシチュエーションとしては全体的には同じ写りである。 

 

 

無限遠 F5.6 SS1/250

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手前のボケが顕著になってきた。解像度はどうなのだろう、と拡大してみた。

 

無限遠 F5.6 SS1/250(中央部拡大)

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時間が数分経過して明るさが違ってはいるが上が8枚玉で下が球面ズミ。解像度は球面ズミのほうが悪いだろう、なんせ相手は「ズミクロン」なのだから。と予想していたが先入観であった。F5.6ではどちらも変わらずよく解像している。(左端の自動販売機のボタン、右端の電柱に巻かれている金属の帯)

 

 

 

無限遠 F4 SS1/500

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 確かに8枚玉のうほうがコントラストが低くなってきたように見えるがどうだろう。

 

無限遠 F2.8 SS1/1000

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無限遠 F2 SS1/2000

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下が球面ズミのF2.0だがこれだけSSの設定を誤っておりF2.8のときの1/1000のままで撮ってしまっており条件が異なって比較にならなくなってしまった。とはいえ球面ズミのほうもF2.0であれば割りと常識的に写っている。

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8枚玉はf2.0だが球面ズミはさらにf1.4までなので比較出来ないが参考までに載せておく。このシチュエーションでさすがこれは非常識な写りとなる。 

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次に近接、といってもポストまで1.5メートル。スナップでこれ以上近づいて撮ることは少ないだろう。

 

近接1.5m F8 SS1/125

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近接1.5m F5.6 SS1/250

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近接1.5m F4.0 SS1/500

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近接1.5m F2.8 SS1/1000

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近接1.5m F2.0 SS1/2000

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 F2.0まで来ると周辺の光量落ちが目立ってくるが、これは意外だったが8枚玉のほうが落ちが大きい。もっとも球面ズミの開放はさらに1段下なので周辺光量に関してはまだ余裕があるのかもしれない。

 ボケへの拘りは無いのだが一応見立ててみる。

 F2.0同士で比べてみると丸ボケは8枚玉のほうが綺麗にはっきり出ている(後ろの酒屋の紺色トタンの鋲や空き缶入れ横の点光源において。)が、個体差もあろうが全体的には球面ズミのほうが収差も相まってかやんわりとしている(自動販売機において)。球面ズミは二線ボケが出やすいという評価を見かけることもあるがあまりあてにならない。

 

 

(参考)球面ズミ悪魔の開放F1.4(SS1/4000)

 これはそれほど滲んでない。経験上であるが悪魔が出てくるのはある光量を超えてから、もしくはあるコントラストの強弱差を超えてからである。

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 ちなみにデジカメの場合の自分好みの設定で撮った2枚。M9のモノクロjpegモードで、コントラストの設定は最高でシャープネスの設定は最低、というかいつもオフにしてしまっている。感度はISO1600にて。

 どちらがどのレンズなのか、、、まあ区別は付かないと言っていい。 

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 上が8枚玉のF2.8で下が球面ズミのF2.8。

 なお今回アップしたサンプルでは判りづらいが8枚玉には樽型の湾曲が少し出る。球面ズミはそれが無く直線が多い被写体では非常に気持ちいいというのも重要なポイントだ。

 

 

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 以下、自分の使い分けなどについて。

 こんな比較をしておきながらなんだが、現在はデジカメ はあまり使わなくなり少なくとも気持ち的にはフィルムがメインである。使っているのはM4に球面ズミばかりだ。だから本当はこのテストもフィルムで行いたいところだったが、ちょっと勿体ないと思てっしまった。まああまりケチくさいことは言わず、そのうちやってみようとは思う。

 なぜメインが8枚玉ではなく球面ズミなのかというと選択の理由は操作性である。球面ズミの絞りには2か所の突起というかツマミが付いているがズミクロンにはそれが無く、ただ絞り環全体にギザギザが刻まれているだけである。球面ズミのこの突起はその位置によっておよその絞り値が目で見なくても手だけで判るのでスナップにはこのほうが便利なのだ。それと我が8枚玉固有だがヘリコイドのトルクが少し重い。球面ズミの同トルクはとてもいい感じで使っていて気持ちいいのである。つまりは、写り云々ではなく使いやすさの違いで球面ズミに軍配が上がっているということだ。写りの違いということではフィルムということで限定するなら開放でない限りは両者とも変わらないというのが自分の見立てであるし球面ズミの悪魔の開放もフィルムで使うことはよほどの緊急避難的以外は無い。

 

 そもそもカメラにしてもレンズにしても新しいモデルのほうが技術が進歩するのが常で良く写るに決まっているし、ことデジカメということで言えば現行モデルを使いたいのだが、なにしろライカの現行レンズは恐ろしく値段が高い。中古でさえ高いとは思うがそれでも現行モデルよりははるかに買いやすい。現行のズミクロン35ミリは我が8枚玉と球面ズミを合わせて買える値段である。ズミルクス35ミリに至ってはプラスM9の中古だって一緒に買える。

 余談となるが球面ズミを入手したのは10年前で最近の中古相場はその当時の2倍以上である。

 これはあるカメラ店で聞いた裏話。最近は落いたがある時期かの国の爆買いブームがあった頃カメら関係もなんでもかんでも買われていった。結果ライカのカメラはかの国に随分行ってしまったようだが、彼らは買う際に必ず値引きを求めるのだそうで、同じモデルで少しくらい高くてもより多く値引いてくれたほうを買う。買う側の心情としてはそれは理解できるが売るほうも商売だから売りたいわけで、かといって原価割れしてまでは売れない。よって作戦としては予め値引きしてくるであろう金額をソロバンに入れて値段を付けるようになって、結果的には中古市場全体で値段がどんどん高騰していった、とのことだ。いったん上がった値段はなかなか下がらずその当時の影響がその後も続いているだろう。

 ということは我々も中古を買うときは買いたたくくらいのことをしないと損ということになるが、そういう行為をふてぶてしいと感じてしまう奥ゆかしい民族なのでなかなかそれも出来ないように思う。

 

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 最後にもう一度球面ズミの開放について。

 悪魔悪魔と言ってはいるが、球面ズミの開放を褒める向きはだいたいこの感じの写りのことを言っているわけで、先にも書いているが明るすぎない場所であればこのように撮れるのである。(カメラはM8)

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 細かく見ると、あちこちの白が黒を浸食して滲んでいるのが分かるがその現象が均一でないのがいいと思う。肩ひものところが分かり易い。全体的にはボケと滲みが相まった独特な柔らさもいい。